文部科学省は、2018年度から大学生の奨学金制度に「所得連動返還型」を導入する方針を固めた。所得連動返還型はイギリスやオーストラリア、アメリカで採用されている制度で、卒業後の年収に応じて返還月額が変動する。景気や年収の増減に応じて返還額が決定するため、低所得の者ほど負担が少なく、回収率を上げることができるという。
引用元: EconomicNews(エコノミックニュース).
明日の某研究会で話そうかと調べていたら、既に発表されていたようだ。
所得連動返済型奨学金は、オーストラリア、ニュージーランド、英国などで提供されている。オーストラリア(HELP)は、2013年現在、450,314人が利用している。また、米国でもFederal Student Loan に関して同様の取り組みが始まっている。ただし、こちらは低所得者のみが対象である。
所得連動変換型奨学金は一定の収入になるまでは返済しなくて良いため、個人に取ってリスクが低く借りやすい。そのため、学資が無くて進学を断念するなど、平等性の観点から問題がある状況を緩和できる。オーストラリアは収入がAU$53,345以上で返済開始、英国は£21,000で返済開始である。オーストラリアの場合、新卒の平均収入がこの閾値を全分野で超えるのは5年目で、最初に返済を始めてから平均8.1年で返済完了している。 収入の把握は各国とも税当局が行い、収入条件を満たした時には、税と一緒に徴収する。利率はCPI+α(収入が上がると上がる)などいろいろである。
これらの国は、ほとんどの大学が国立なので、ファンドも国が用意している。日本の場合は私学が多いので、このファンドをどうするかというのは別途検討が必要かもしれない。たとえば、各学校が用意するなどということも考えられるかもしれない。この場合、良い教育をして高収入の人を産出すればリターンが良くなるわけで、大学の教育の質の改善にも寄与することが期待される。
ちなみに、オーストラリアのHELPの残高の推移は、図1のようになっている。
一方、金額の問題もある。上記の記事によると現在の貸与額は年平均80万円だそうである。
教育の高度化に伴って、今後、教育費の高騰が予想される[1]が、これでは全然足りない。学資が無くて進学を断念するのを防ぐためには、金額面での充実も必要になってくると思われる。
いずれにせよ、良い方向への一歩だと思うので、継続的にフォローしていきたいと思う。
[1] 米国の名門大学だと、授業料だけで年間500万円ほどかかるといわれる。